無気力絵描き通信

ゆ〜ほのブログです。

リズと青い鳥は譜面の様な映画。ネタバレ考察・妄想

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リズと青い鳥を二回見たのでネタバレ込みで、感想や妄想など話していけたらと思います!

しかも二回目は監督ミニトークショー付きの鑑賞に行って来ました!

監督やはりかわいい!

僕はけいおんもたまこも聲の形もすきです。 

 

しかしユーフォニアム本編は見たことありません、原作も読んでません、ごめんなさい。

でもこの映画はそんな僕から見ても1つの映画として完結しているものに見えました。

 

 

 

 

テーマはポリリズム、そして2人が公倍数を見つけるストーリー

僕の考察を結論から言うとこの映画はポリリズムです。

ポリリズムとはなにか。

簡単に言うと音楽の用語で、例えば4拍子の曲に5拍子のリズムを入れることで不思議な効果を出す手法です。

4拍子のなかに5を入れると、5のうちの4までは4拍の一小節の中に入りますが、一つだけ頭が出てしまい、5の最後の1拍は次の小節の4拍の頭の1拍目になります。

そうやってすこしずつズレていくので、ちゃんと小節のお尻がきっちりあうのは2つの公倍数である20泊目。つまり4拍で1小節とすると、5小節目でお尻が重なり、6小節目の頭で2人の最初の一歩が揃います。そしてまたズレていきます。

 

なんでこんなよくわからんような話をするのか。実はこれがかなり大切なキーワードになってくると思うんです。

 

印象的なはじまりのシーン。

映画は学校に登校する2人から始まります。

待っているみぞれ、そして希美が登場すると2人は歩き出し、対照的な性格を表すかの様なそれぞれの足取りで音楽室まで向かいます。

(ここセリフないのに2人の性格が歩いてるだけでわかる!足で自己紹介!さすが山田尚子監督!これぞ山田節!)

そこで2人の足音とともに使われている音楽もポリリズムが使われていたような気がします。

 

親友だとおもって同じ「一小節の1拍目」から踏み出した2人。

しかし2人には本人たちが気付かないうちにズレが生じていたのです。

最初のシーンで希美が青い羽を拾ってみぞれに渡します。でも、みぞれは「ありがとう、、?」という疑問系で返します。

音楽室につくと、みぞれは「うれしい。」と一言。

希美は「あーうれしいよね!リズと青い鳥!この曲の元になった絵本知ってる?小さい頃よく読んだんだー」と返しますが、みぞれはキョトンとしていて、「読んだことない」と返します。

ここで先にみぞれが言った「うれしい」は、青い羽をくれたことかと思います。

つまり、2人の会話がワンテンポズレているんです。

(ここのうれしいは今2人でいることのうれしいかもしれませんが、あまり素直に迅速に気持ちを伝えられないみぞれの性格を考えると、前者の方が個人的にはピンと来ます)

 

2人は互いに素である数字

何が言いたいのかというと、2人はポリリズムの数字に例えられるんです。

どっかのインタビューでも、監督は「2人は互いに素の数字」ということを言っていたかと思います。

映画のワンシーンで、数秒数学の授業のシーンが出て来ます。

先生は「2つの数字で共通の公約数を1しか持たないものを、互いに素といいます」的なことを話していました。

監督も、「4と5は隣り合っているけれど、お互いに共通で割れる数は1しかない」という風に2人の関係を語っていました。

僕は2人が4と5という数字であるなら、この映画自体はポリリズムの楽譜の様だ、と思います。

2人はお互いに同じテンポで歩いているつもりでも、少しずつズレて行ってしまう。

そんなポリリズムの様に2人の関係はすれ違いが重なり、互いに避けるかのように離れて行ってしまいます。

 

 

みぞれだけじゃなく、2人ともコミュニケーションが不器用

2人のすれ違いにはコミュニケーションの不器用さ、伝えることが不足している様に思いました。

 

みぞれはもともと内向的で自分の気持ちを言葉になかなかできない。

だから、希美の気持ちを探ることも出来ずに、ただ部活が終わってしまう本番がこないこと、そして希美と一緒にいれる練習だけが続くことを願います。

だから、青い鳥を放せずに自分の手元に縛ろうとしてしまいます。

 

希美は一見みんなの前で明るく振る舞い、誰とでも仲がいいようで、実は誰にも心の扉は開けていない

親友であるはずのみぞれにさえ、自分の本心や感情を打ち明けることができないんです。

みぞれが音大誘われて羨ましい気持ちや嫉妬の気持ちを言葉に出来ないし、大好きのハグも本当はしてみたくても、みぞれが嫌なんじゃないかとか考えて気を使って冗談にしてしまう。

希美も傷つくのが怖くて、誰にも本心でぶつかれないキャラなんです。

 

2人はお互いの気持ちを言葉に出来ずにすれ違い、はなれていきます。

 

 

大好きのハグという初めての2人の本当のコミュニケーション

大好きのハグのシーンがあります。

ハグをして、お互いに好きなところを言い合います。

みぞれは希美の全てが好きで、たくさん好きなところを挙げます。

希美は「みぞれのオーボエが好き」とだけいいます。

ここで初めてお互いがお互いの関係性を理解するシーンだと思います。初めて本心を伝えたんだから。

希美の「みぞれのオーボエがすき」ってセリフ、ただそれだけかよっ!って感じのセリフなんですが・・・

これはまさにそれだけの関係でしかないような意味も含みつつも、自分のフルートの方が上だと思っていた彼女にとってそれを口にするのは勇気がいるものです。

そういう普通の友達くらいの相手だったらプライドや嫉妬の気持ちが邪魔して言えないようなことを言える関係。

希美にとって、嫉妬やプライドを乗り越えて好きと言えるような相手がみぞれなんだと思います。

その気持ちはきっと、それ以上でもそれ以下でもない

 

この大好きのハグにより、お互いが隣り合う数字でありながら、共通の公約数が1のみだとわかります。

お互いが決して同じ数字ではなく、隣り合うとは言っても4と5であり、ポリリズムで言えば公倍数の20まではずっと噛み合わないことを悟ります。

 

disjointについて、ハッピーアイスクリームについて

disjointは互いに素を表す英語らしいですが、最後の方でdisが消されてjointになります。

これはシンプルに結合、つまり一緒になれたね!っていう風に解釈してしまいますが、そうではないと思っています。

disjointという言葉の中にはjointがあるよ!という強調ではないでしょうか。

2人は気持ちがお互いに分かったとはいえ、きっとまたズレていきます。つまり互いに素の数字であることは変わりません

 

この映画は2人の関係が百合で成就した!とか、友情が仲直りした!みたいなわかりやすいシーンがありません。

大好きのハグのあと2人の下校シーンで終わりますが、霧が晴れたかのような2人の表情と、「本番頑張ろう」という2人が同時に言ってしまう台詞があります。

 

劇中で後輩達?がキャッキャしてるシーンで同じく後輩ちゃん2人のセリフがシンクロして、片方が「ハッピーアイスクリーム!」と叫びます。

セリフが被った時に先にハッピーアイスクリーム!と叫ぶと、被った相手にアイスクリームを奢ってもらえるらしいです。なにその青春ゲーム!笑

 

それをみていたみぞれは、最後のシーンで希美とセリフがかぶると、ハッピーアイスクリーム!と言います。

ウホー!青春だねっ!!・・・でも特になにも起こらないと言えばなにも起こらない終わり方です。

 

この同時のセリフは、映画を楽譜と見るなら、ポリリズムの4と5が重なる、20拍目のシーンです

なぜ終わりのシーンがコレなのか。なんでここで終わっちゃうのか。

なんかもうちょっと2人のドラマを見せてくれたらスッキリするのに!と思うんですが、これ以降の時系列は映画にしなくてもいいんです。

なぜなら2人はもうお互いに4と5ということがわかっていて、一緒に歩いていてもなぜかずれる、なんでズレちゃうのか、離れてしまうのかわからなかった劇中の関係とは違います。

気持ちを伝えたことでお互いに少し理解が深まって、伝えることの大切さを2人はもう知っています。

20拍目まで一緒になれなかった2人ですが、、21拍目からまたズレていくことを2人は知っています

でも、つぎの40拍目にはきっとまた一緒になれるんです

お互いがわかっている今は、もう相手を縛る必要もなく、前よりも自然体で相手に接することができるんじゃないでしょうか。

 

本番が来なければいいと願っていたみぞれと、みぞれの実力に嫉妬した希美が、お互いに本心から、「本番頑張ろう」という気持ちで一緒になれたんです。

これって二人にとって大きな変化ですよね。

きっと本番はうまくいくと思います。
リズが青い鳥を放ったように2人はもう自由になれた。

 

2人の数字と公倍数がわかった時点で、もうわかりきった21拍目以降を描くことは不要なんです。

だから映画はあそこで終わっているんだと思いました。

 

 

おまけ。フグのシーン

みぞれがフグを眺めているシーンが何回かありますが、可愛いもの、愛するものを縛ってしまう彼女の性格を水槽に閉じ込められたフグがよく表していると思います。

2回目に見て気づいたんですが、フグが映るシーンでは、必ず水槽に入っていることがわかるように、水槽の角や枠の部分が必ずフグと一緒に画面にフレームインしています。

でも、大好きのハグのあとのシーンだけは、フグだけがズームで映され、水槽の枠は映されていません。

そしてその後ろには窓を通して綺麗な空が映っています。

ここってとらわれていた青い鳥が飛び立ったように、2人が自由になったことを暗示しているんじゃないかと思います。

まるで数匹の可愛いフグが自由に限りない空を泳いでるみたいなんです。

これもポリリズムも妄想なので深読みかもしれないですが、そうやってみるとさらに楽しめると思いませんか?

 

 

 

 

 

 

個人的感想

ここまで書いておきながら、ここから個人的にはこの映画があまり好きじゃないという話

映画を純粋に楽しみたい方は水を差すような内容なので、読まないでください。

 

 

 

 

 

 

 

ここまで書いたんですが、個人的な好みでいうと、この映画はそこまで大好きって感じではなかったです・・・

確かに山田尚子監督の心情描写はここまで来たかっ!って感じだし、絵は綺麗だし、よくできているし女の子も可愛いんですが。

ちょっとわかりづらいし、2人の関係を本当に繊細かつ濃密にわずかな息遣いも逃さず描写している反面、内容の無さみたいなものに物足りなさを感じてしまいました。

良くも悪くも青春や女の子の雰囲気を楽しむ映画だとおもいます。

他の京アニ作品などと相対的に見た時、エンターテイメントよりもアートに寄った作品ではないでしょうか。

もう少しエンターテイメント性が先にあって、一段奥にアート性があるような作品のほうが自分は飽きずに楽しめます。

 

あと本編との差別化で淡い色彩や繊細な線とすらっとしたキャラデザで映画の雰囲気を作ってるのは素敵ですが、首とか細すぎでは!?とか、リズや、青い鳥の少女が11頭身くらいありそうだな、みたいなバランスも少し気になってしまいました。

セリフより映像で伝える映画である以上、そこらへんのノイズは除去してほしかったです。

 

あと、今作はリアル志向というか、表情やら仕草やらもかなり作り込まれているし、2人の心情や表情が「アニメのキャラ」ではなく「2人の人間」として本当に細かく深いところまで描いてます。

単焦点レンズ的な画作りや繊細で息遣いも逃さないような音響も相まって、そこに彼女たちが存在するかのようなリアルさもあります。

でも、その一方で、オーバーなリアクションというか、本当の人間だったらそんな動き絶対しない!みたいなキャラキャラしいような、説明くさい動きがたまに入ってくるのが「あぁ〜・・・!」ってなっちゃいました。

 

上記の様に個人的好みに合わなかった部分もありますが、総合するとそんなに好きではないとは言っても、それは僕のわがままの部分であって、見てよかったなと思いますし、観てちゃんと楽しめました。

2回も観たくらいですからね!そして2回見た価値もあると思いました。

嫌な気持ちにさせてしまった方もいるかもしれませんが、でもやっぱり感想といったらちゃんと感じた好き嫌いまで書かないと嘘になってしまうのではっきり思ったことを書かせていただきました。

楽しんでいる方を否定したいわけでは全くありません。ただの僕のワガママです

 

原作ありきとオリジナルなので一概に比較はできませんが、僕は山田監督の作品ではたまこラブストーリーがめちゃめちゃめちゃ好きです。

また山田尚子監督のオリジナル作品が観たいです。とても期待してます!